Partly cloudy with rain

奈落の底からサラリーマン。何とか部長をやってます。

逮捕


日常生活からかけ離れた空間、警察署。

わたしは逮捕すらされぬまま自分の車を運転し所轄の警察署に向かった。

捜査一課なのかどうかわからない。

だが確かにここは警察署内の一室。

薄明るい蛍光灯の灯り。古いスチール机。

数名の刑事。一見すると

役所のようだ。

ドラマを見過ぎのようだ。

警察の迫力などはない。

刑事たちと世間話をする。

こちらはそんな気ではない。しかし話に付き合わねば。

 

何時間が経ったであろうか。

どのくらいの時間に来たのかも覚えていない。

テレビがついている。

相撲をやっている。

夕方の6時頃なのだろう。

刑事が言う。

「今、同僚が裁判所に行っています」

その時は、何のことやら分からない。

思えば、わたしへの逮捕状を請求しに行っていたのだ。

 

時は経つ。

そして刑事が帰ってきたそうだ。

わたしに対して何か説明をしている。

そして「逮捕」と言っている。

現時間を話しながら素早くわたしに手錠をかけた。

テレビで見た手錠。

オモチャの手錠は知っている。

けれどこれは本物。

真鍮製なのか、ズッシリ重い。そしてとても冷たい。

自由を奪われたことが身に沁みる。

刑事の態度も急に変わった。

フレンドリーだった態度はなくなり冷たく容疑者である

わたしを扱った。

まず、別室に連れて行かれる。手錠のほか、腰縄も付けられている。

散歩に出かけた犬のようであった。

別室には壁に目盛りが書いてある。

そして机とカメラ。

わたしは目盛りの前に立たされると

正面、ななめ前、横顔、あらゆる角度で写真を撮られた。

見たことのある光景だ。

そのあとは、黒いインクを手のひらいっぱいに塗らされ

手の平や全ての指、それもありとあらゆる角度で押印をする。

この手は洗えるのだろうか

なんだかどうでもよいことを考えていた。

 

次回、「鉄格子」