厚意の差し入れと身勝手な迷惑
日々を過ごす。
毎日のルーティーン。人員確認、2週間に5回の風呂。
30分の運動。夕方と夜のラジオ放送。
単独室なので誰に気を遣うこともない。だが、言葉をほとんど話さなくなる。
何せ相手がいないのだ。それ自体は苦痛ではなかったが、声帯がなくなってしまい話せなくなるのでは、と思ったりもした。
嫁は、時間を作っては面会に来てくれた。
家から近くないのに。子供たちの面倒、会社の対応。
本当にありがたい。
そして、差し入れをしてくれる。
決まって入れてくれるチョコパイ、亀田の柿ピー。
そしてスポーツ新聞を1ヶ月ごと入れてくれた。
お金の工面も大変だろうに本当にすまないと思っていた。
被告人となったが、まだわたしは刑が確定しない未決拘留者。
だからお菓子が食べられたり私服を着れたりと自由がある。
わたしはというとやることが、ルーティーン以外にはないのだ。
新聞を読み、官本を借りて読む。
あとは連日、手紙を書く。
今思えば受け取る方は迷惑だ。
毎日のように届く手紙。
緊急性はないのだ。
それでも書かずにはいられない。
そしてわたしは何を急いていたのか、毎日「速達」で手紙を出す。
当時でも通常価格に270円をプラスして出す。
持っていたお金があっという間になくなってしまった。
嫁からは、会社を退職したこと、会社の人々がとても心配している人、怒っている人、
色々なこと、退職金をもらえたこと。
嫁がわざわざ会社に赴いてくれたこと、などを話してくれた。
わたしはこのあと決めていた。
「お金は使わない」と。
全ては官(国支給)のものを使おうと。
官の物はここで生活するには、とりあえず間に合う。
着古したパンツにシャツ。歯ブラシ、粉歯磨き粉。
冬などは寒いのでアンダーシャツやモモヒキを買える。
しかしわたしはいらない。寒さは我慢すればよいのだ。
パンツなどは、おそらく受刑者が作っているのだろう。
形もイビツな気もするしとても粗末なものばかりだ。
それに他人が履いていただろうパンツなど履くことなどなかった。
とても嫌な思いをした。
しかし、わたしはそれも罰の一つだと考えていた。