Partly cloudy with rain

奈落の底からサラリーマン。何とか部長をやってます。

価値観と黄色いタオルへの思いと


ある時、わたしの大切な尊敬する友人が面会に来てくれた。

わたしは泣き崩れ会話にならない。

友人は悲しそうにわたしを見つめやはり言葉にならない。

15分の面会時間は、あっと言う間に過ぎる。

 


部屋に戻りしばらくすると「差し入れだ」と刑務官が入れてくれた。

お菓子、そして2本の黄色いタオル。

友人が差し入れてくれたのだ。

ありがたい。

わたしは、生活用品は官の物しか使わないと決めていたが、友人からもらった

このタオルはありがたく使わせてもらうことにした。

このタオル。この後大切に大切に使うことになる。

洗顔時の払拭、お風呂で身体を洗うとき。

お風呂を出て身体を払拭する。普通のタオルにはとても過酷な使い方だと思う。

そして何年も経過した後のわたしのタオルは黄色い色が抜け、白いタオルとなり、

生地はボロボロ、ところどころ汚い茶色と化してしまった。

今までタオルをこんなに大事に使ったことなどない。

元来、友人がいないわたし。

唯一の友人が入れてくれた差し入れ。

このタオルはわたしにとって特別なものだ。

これから先、もう会うことは叶わないかもしれない。

わたしは、勝手に絆の如く大切に大切に扱うことになる。

のちにわたしは「乞食」と言われる。

それはそうだ。

身に付けてるものは全て官、つまり国からの借り物。そして粗末。

あまり話をしないわたし。そして汚いタオル。

わたしはその状況も甘んじて受けた。

思えば、決して裕福でなかった家庭。

親父はいつも着古した服、穴の空いた下着を着て凌いでいた。

わたしを育てるため、そして少しでもわたしに苦労をかけないために

切り詰めて生活をしていたのだ。

当時のわたしは、そんな親父の姿を見て「こんな親にはならない。自分を犠牲にしてまで」

と思っていた。

今はそんな親父と似た姿だ。

罰を受けなければいけないのだ。

大袈裟でなくいつも、そして今もそう感じながら生きている。