結審
判決は5年だった。
死んだ親父のことを考えれば5年でも短いかもしれない。
というよりもわたしの犯したことは時間の経過では拭え
ない。事実だけが残る。
傍聴席の嫁は黙って聞いている。
父親殺し。
子供たちにも、嫁にも嫁の両親、親族にも「人殺しの奴」が親族にいるのだ。
特に子供たちへの影響。
まだ2人とも小学生。
判決を受けたときには、こんなことを考える余裕も
なかった。でも消えない事実だ。
法治国家である日本での判断。
わたしの存在自体がもはや迷惑なのだ。
消えてしまいたい。死んでしまいたい。
検事と裁判官にいろいろ言われた気がする。
「何が分かるのか…」
死んで親父とお袋のところに行きたい…
身勝手に見えるかもしれない。人でなしに見えるかも
しれない。
けど、親父への申し訳なさ、嫁や子供たちへの申し訳
なさ。
取り返しがつかないことは分かっている。
親父を殺してしまった。
そしてわたしも日本の社会から
死んだ。
家族にただ残るのは、“家族に人殺し”がいること、重荷を与えてしまったこと。