同衆と呼ばれる人々と
同衆と言われる同部屋の面々。
部屋の中は常に5、6人はいるだろうか。
窃盗、詐欺、薬物の使用、売
人それぞれ。容疑の大きさ、弁護士の良し悪し?など、本当に人それぞれなのだ。
長くいる人、すぐに出ていける人。
すぐに出ていける人は、いわゆる「送検」されてそのままパイ(釈放)となる人もいる。
四川出身の中国人、上海からきた中国人、20代前半であろう、茶髪で舌にまでピアスをしている若者。中年の男、初老の恰幅がいいオヤジ。そしてわたしだ。
部屋は当番制になっているらしい。
1番の新入りは一番やりたくないトイレ掃除が担当だ。
前述したルーティーンのあと、掃除なのだ。
ほぼ素手で、雑巾一枚を持ち、和式便所を掃除する。
半分死んでいるわたしもトイレ掃除はしたこのがない、プラス誰が使ってるか分からない汚い空間を綺麗にせねばならない。
もうヤケクソで掃除をする。
こういう場所はやることがないからか、掃除にとても注力する。
だからなのか、建物は古くても施設内は異常に綺麗なのだ。
朝のルーティーンが済むとお昼ご飯までやることがない。
支給の本を読むか、着た手紙を読むか。汚い絨毯に寝るか。
わたしは朝食も取らない、本もない、もちろん手紙も。
わたしはただ空を見つめている。
それでも同衆間での会話がある。
それぞれ興味があるのだ。
どんなことしてここにいるのか。
世間話。
わたしはほとんど参加しない。
あまり関わりを持ちたくない。周囲の人々にこれ以上迷惑をかけたくない。
漏れ聞こえてくる。
四川の中国人。
日本に来て結果的に偽札に関わらされてしまったらしい。
20代茶髪ピアス。
オレオレ詐欺で捕まった。
中年の男。
仕事の合間に空き巣を繰り返す常習犯。
もう1人の中年男。
彼はどうも障害があるらしい。
賽銭泥棒を繰り返す。
初老の恰幅。
ヤクザの親分。
覚醒剤を疑われ警察に踏み込まれ逮捕。
上記、ロクでもない人たちの集まり。わたしを含めて。
だが、何故だかみんないい人なのだ。
わたしが塞ぎこんでいるせいかもしれない。
中国人、舌ピアスの若者。
みんなわたしを気遣い、時に元気づけてくれる。
自分のことはさておいてだ。
食欲がなく、いつも食事をとらないわたし。
留置場内では、お金を払えば自弁として外の弁当屋や出前を頼むことができるのだ。
ヤクザの親分はそのときどきにわたしを気遣い、自弁のおかずを差し出し
「これ食え、生が出るから」と言って分けてくれた。
また、異国の地で囚われの身になっている中国人。
日本人のわたしでも面食らう知らない空間としきたり。
恋人から手紙が届き、涙を流す中国人。
人のことなど構っていられないはずなのにわたしのことを気遣い、時には
たわいもない遊びに誘ってくれる。
だから、ここにいるときは、決して犯罪者には見えなかった。
みんな常識人。良い人たちに感じる。
あのときは、ありがとうございました。
二度と会うことはない。
特に中国人の二人。
ワン、リク。
謝謝。